第31回「 発達障害に合併しやすい症状(1) チック」(令和3年3月分)
更新日:2021年4月13日
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チックは、まばたきや顔をしかめるような動きを頻繁にする「運動チック」、
風邪ではなさそうだが咳払いを繰り返す、ハミングのようにフンフン言う、などの「音声チック」があり
医学用語では「不随意運動」と言います。
わかりやすく言うと「くせ」と考えるとよいと思います。くせ、ですがわざとではなく、
自分ではやめるのが難しいので叱ってはいけません。
症状が出る割合は小児の1%程度と言われており決して珍しい症状ではありませんが、
自閉スペクトラム症や注意欠如多動症(ADHD)、
不安障害などの傾向がある子どもには合併しやすいといわれています。
原因ははっきりわかっていないのですが、脳機能の発達の偏りでみられるもののようです。
育て方や環境は直接の原因ではないことを知っておいてください。
一般的には経過観察で自然に消失することが多いです。
親は早くやめさせようと症状を指摘したり、心配した目でみるのはかえって症状を長引かせます。
注目していないようにふるまうのがよいでしょう。
睡眠不足などの生活リズムの不整、ゲームやメディア視聴のやりすぎは
チックを悪化させる一因になります。生活環境を見直しましょう。
一部のチックは難治化することもあります。
運動や音声の混在した多彩なチックが1年以上続く場合、
Tourette(トゥーレット)症候群という重症チックの可能性があります。
本人も疲れてしまうほどチック症状がある場合は早めに医療機関に相談してください。
症状の程度によっては薬物療法が必要な場合もあります。
チックも発達障害と同じく「体質」のようなものですので、
いったん症状が消失してもまた繰り返すことがあります。
約9割の子は成人するまでに改善するといわれていますが
完全に消失するのは約5割程度だという報告もあります。
体質としてある程度つきあっていかなければいけないと思ったほうがよいでしょう。
環境はチックの直接原因ではないですが、ストレスや不安が高い時期、
すごく嫌な(あるいは楽しみでも)イベントの前後などでは増悪する傾向にあります。
よって、チックは子どもの情緒のバロメーターとも言えます。
チック症状が目立ってきたときは
「何か気になっていることがあるのかな?」「運動会前だからかな?」と推測し、
気持ちの安定化を図ってあげてください。
幼児期は本人もまわりもチックをあまり気にしないことが多いようですが、
小学生以降になると本人が気にしたり、まわりも違和感を持つ場合があります。
学校などの場では、本人が自信をなくさないようチックにとらわれず
その子らしく活動できるよう支援するとともに、周囲の子どもへの配慮もあるとよいでしょう。
次回は発達障害に合併しやすい症状(2)として、「不器用」を取り上げます。
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