第10回 「家庭ですること・しないこと」(平成31年2月)
更新日:2019年2月20日
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新年あけましておめでとうございます。
今年もこども未来センターを、本コラムをよろしくお願いいたします。
日々診療する中で、発達障害を持つお子さんの親御さんから
「家でできることはありませんか?」というご質問をよくいただきます。
質問の意図として「子どもの成長を促すためのトレーニングはないか?」
というニュアンスが含まれていることが多いように思います。
年齢によってあるいは子どもの発達段階によって、家庭での関わり方に多少の違いはあります。
これから数回のシリーズで
年齢別に「家庭ですること・しないこと」をお話したいと思います
今回は年齢に関わらず共通して言えることをまずはお話します。
「家庭ですること」第一は、「親が常識的な生活習慣を実践する」です。
具体的には日中は活動し夜は寝る、一日三食偏食なく食べる、清潔を保つ、といったことです。
発達障害をもつ子どもたちは
視覚的に情報を理解する(「視覚優位の認知」、といいます)のが得意なことが多いので、
言葉で理屈を並べるより親が見本を「見せる」ことが効果的です。
子どもに求める生活習慣をまずは親が実践しましょう。
視覚優位の認知はゲームやスマートフォンへの依存を生みやすいことも意味します。
子どもにネット・スマホ依存になってほしくなければ、親がまず模範を示すことです。
自閉スペクトラム症の子どもは「ルーティンを好む」ことが特徴ですから、
幼少時期から親が規則正しい生活習慣の見本を示すことで子どもの生活習慣も安定しやすくなります
(逆に、一度学習した不安定な生活リズムを更正するのは至難の業です)。
第二は、「子どものよき相談相手になる」です。
子どもの発達特性を受け入れ、
日常生活の様々な場面でストレスや困難を感じていることに理解を示しましょう。
「こうなってほしい」という親の理想を押し付ける前に子どもの言い分を聞き、
妥協案や解決策を一緒に考えてあげてほしいと思います。
「お母さん(お父さん)は味方なんだ。」「大人(親)に相談すればなんとかなるもんだ。」
と感じながら育つことは安心感が得られ、
先々困ったことがあっても大崩れしない子になります。
「よき相談相手」になるためのポイントはただ一つ。
子どもの意見・訴えについて「ただ聞く・判断しない」ことです。
ではやってはいけないことは何でしょうか?
そうです。「家庭ですること」の逆です。
親が不規則不安定な生活習慣を過ごすこと、
子どもの気持ち・意見に耳を傾けずあれこれ口やかましく介入すること、
です。
そんなこと?と思われるかもしれませんが、生活リズムや子どもへの姿勢はなにより重要なことです。
療育を受けておられるお子さんについて、
家庭で特別なトレーニングをお願いすることはありません。
ホームプログラムとして伝授している内容は普段の生活の流れの中で取り入れてもらうことが中心です。
親が教師やセラピスト(療育の専門家)になってしまうことはあまりおすすめしません。
親という唯一の存在として子どもに接することが大切だからです。
さて、次回から年齢別に「すること・しないこと」を考えていきましょう。