第39回「子どものタイミングを待つということ」(令和4年7月)
更新日:2022年10月31日
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先日、学校や保育所等で子どもたちに木登りやクライミングを
体験してもらう活動をされているインストラクターの方の講演を聞きました。
運動が好きな子はもちろん、
苦手な子もコツをつかめば木登りは楽しみやすく達成感を得られる経験になる、とのことでした。
そういえば自分も子どものころはなぜか無性に木登りしていたなあ、などと懐かしく思い出しました。
講演後の質疑応答で「自閉症の子どもは不器用だったり、過度に怖がったりで、
なかなか木登りに参加させることが難しいとも思うが、そういう子にうまく参加させるコツはないか?」
という質問がありました。
そのインストラクターの方のお答えは
「自閉症の子は、はじめは興味を示さなかったり拒否したりしますが、
待っていれば自分のタイミングで参加します。
そして不器用な子でも自分から参加したときはだいたい一発で登りきります。
最終的には他の誰よりも上手になることが多いです。」
とのことでした。
参加を渋っている間、周りはやきもきしますが、
本人は色々観察し考えている時間だったようです。
本人が「いける!」と決めた時が最も成功する可能性が高いタイミングだった、
ということです。
自閉傾向のある子に「何かをさせる」ことは時に大変難しい場合があります。
その際、「本人にしたい気持ちがあるのか」を確認するとともに、
「本人のタイミングを待つ」ということが大切だと私も感じています。
不登校の状態にある子どもの対応においても、同じことが言えるかもしれません。
周りが子どもをなんとか学校に近づけようとあれこれ画策しても、
本人にその気持ちがなければうまくいかず、
むしろ子どもは心をさらに閉ざしてしまうおそれすらあります。
また、本人に動きたい気持ちがあっても自分で「大丈夫」と思えるタイミングには個人差があり、
待たされる側は大変不安な気持ちだと思いますが、
一見何も進捗していないような期間も子どもの中では気持ちの整理や必要な休息をとるなど、
意味のある期間です。
そして、インストラクターの方が仰っていたように
「本人タイミング=成功タイミング」だと私も思います。
その時がくるまで、温かく、粘り強く見守りましょう。
では子どものタイミングを待つ間に支援者(親)が
できることは何もないのでしょうか?何もなくはないと思います。
ひとつは、子どもがついに「動き出したい」というメッセージを発信したときに、
「こういう方法があるよ、こんな居場所があるよ」と速やかに支援を開始できるよう準備しておくことです。
学校と保護者で本人への接し方や柔軟な登校スタイルについて話し合っておく、
子どもが興味をもちそうな学校・事業所の情報収集をしておく、などです。
もうひとつは、自分の心身の健康を整え、生き生きと生活することです。
子どもが安心感をもって家にいるためには、親や支援者が元気でなくてはいけないと思います。
子どものタイミングを待つ間はそばに寄り添い、
いざその時がきたら伴走する、どちらも気力・体力がいることですから。
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