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第43回 「ギフテッドは“恵まれた才能”なのか?」(令和5年8月)

更新日:2023年12月8日

ページ番号:80797629

学問やスポーツ、芸能などの世界で突出した才能を発揮する人がいますね。
 
心理学や教育学の用語で、そういった才能をもった子どもを「ギフテッド(Gifted Child)」と呼ぶことがあります。すでに何らかの才能を実際に発揮している子と潜在的に才能を持っていると推測される子を合わせての総称になります。「診断名」ではなく、その子の特徴を表すラベルのようなものと理解してください。
 
私も診察の際に、話しぶりから頭がよさそうだと感じさせる子や、語学の習得が驚くほど早い子など「いわゆるギフテッドかな?」と思わせるケースに出会うことがあります。発達評価のために心理検査を実施した際、IQ(知能指数)が120~130を超えるケースが「ギフテッドタイプ」にあてはまることが多いので、一つの目安になります。(注:当センターではギフテッドかどうかの判断目的に心理検査は実施していません。)
 
では、ギフテッドとは「才能に恵まれた優秀な子」、なのでしょうか?実はそれは誤った理解です。
 
ギフテッド児のうち「数学の天才」のような才能を顕著に発揮するケースは稀で、「なんとなく賢そう」「面白いところに気が付く子」のようなイメージの子が大半です。また何事も優秀なわけではなく、1つか2つの分野で才能を示すことがありますが、その他の分野は平均かそれ以下のことが多いようです。得意不得意のアンバランスさがあり、「総合的には成績は良くない」ケースも多いのです。「ギフテッド=天才」ではないということです。
 
ギフテッドならではの困難や悩みもあります。
 
「分かりきった授業を聞き続けるのが苦痛」「同級生と話題が合わない」「頭の回転の速さに書くスピードが追い付かず、プリント学習が辛い」などが挙げられます。友達や学校の先生に正しく理解してもらえないことが多く、誰にも相談できず孤立してしまうこともあります。
 
保護者も通常の学校では合わない・満たされないわが子の将来について悩まれていることが多く、担任の先生が変わるたびに説明しないといけない・しても理解してもらえないといった悩みも聞かれます。
 
また、ギフテッド児が発達障害や精神疾患を併せ持つことが多いことも報告されています。優れた才能と障害の双方があることは、「2重に特別な状況(twice-exceptional: 2E)とも呼ばれています。2Eの子も優秀な部分が目立つために、困っている部分が見えにくくなり、周囲から理解されにくい状況に置かれています。「ギフテッドであるが故の生きづらさもある」ということです。
 
一部にギフテッド児を集めて「才能教育」のような形で育てようとする試みも聞かれます。本人に適した環境の中で、のびのびと長所を生かせる場があることはよいのですが、差別意識をギフテッドにもそうでない子にも生み出すリスクが懸念されます。得意なことを存分に伸ばす場を保障しつつ、様々な個性・境遇の子どもたちとの交流も必要だと思います。ギフテッドに対する理解・支援とは、子どもたちがお互いの強み・弱みを理解し助け合うこと、つまり「多様性の尊重・理解」が重要だという点では、発達障害の子どもたちへの対応と共通していると思います。
 
※こども未来センター診療所の開所状況はホームページ、公式X(旧Twitter)で随時お知らせしております。引き続きご参照ください。

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