【西宮北口】阪急西宮北口駅ダイヤモンドクロス 姿を消す(昭和59年3月25日)
更新日:2022年1月25日
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「ゴトゴト」「ガタタン、ガタタン」。懐かしく思い出される方もあろうその響きは、阪急電車西宮北口駅の名物であった、神戸線と今津線の交差した線路を通過する音です。
線路の平面交差は路面電車では数多くありますが、列車本数の多い鉄道線同士では全国で唯一でした。昭和59年3月25日、通称「ダイヤモンドクロス」は姿を消しました。
西宮北口駅
大正9年7月6日、大阪と神戸を結ぶ阪神急行電車神戸線が営業を開始し、西宮北口駅は誕生します。大正10年9月2日、そこから北の宝塚とつながり、西宝線といいました。
大正15年12月18日、西宝線は西宮北口駅から今津まで南へ延伸され、今津線と名称を変更します。ここに神戸線と平面交差するダイヤモンドクロスは誕生します。
大阪と神戸、両市の中間に位置する西宮市は、阪急電鉄、阪神電鉄、JRが東西に横断しています。大阪・神戸に通勤通学する人々は各駅から15~20分ほどあれば通え、とくに西宮北口駅は東西南北に本線支線が走り、乗降客数は阪神間で最も多い駅といえます。
構内の風景
このため平面交差していた時代の駅構内は階段が多く、ラッシュ時は人々でごった返し、殺風景になりがちです。
このような場だからこそ潤いをと、池で鯉を飼い、線路沿いに花を植えたりと工夫も凝らされていました。
昭和32年当時の西宮北口駅の線路図です。
7号線と8号線は構内踏切を通って移動します。また、このほかにも4号線から今津線へ、今津線5号線と6号線、9号線から東出口へと踏切がありました。
遮断機はなく、フェンスを移動させるようです。ラッシュ時の人波をどうさばいたのでしょう。駅員の苦労が偲ばれます。
昭和34年ごろ、宝塚から神戸へ行く7号線・8号線のカーブが見えます。この年の冬、7号線は北口駅で行き止まりとなりました。
戦後、北口駅南西の敷地には、多くの社宅、公営住宅が建ち並び、北口団地と呼ばれました。近代的な団地生活は人々の憧れでした。
なつかしの西宮北口駅周辺
駅の周辺も年代によってさまざまな表情を持っています。西宮北口駅東踏切は、現在のアンダーパスとなる通路の上にありました。昭和35年12月、地下道となったのがはじまりです。
踏切は神戸方面行きホームのすぐ東にあり、遮断機が4ヶ所あります。手前が神戸行き1号線の踏切、右手に踏切番があります。正面に見えるのは北口市場です。三輪トラックや自転車に時代を感じます。
踏切を渡って西へ行くと、東出口がありました。朝から店を開けているのは川上商店、手前のガラス扉は北京食堂です。
昭和32年ごろの西出口の駅前公園は、すべり台やブランコなどの遊具がありました。
バスターミナルにボンネットバスが停まっています。西宮北口駅は、私学へ通う学生の姿が多く見られます。また、南出口は西宮球場の最寄口でもありました。
昭和41年7月、神戸行きホームの拡張に合わせて、新しく鉄筋4階建の事務所ができ、南出口は一変します。
ダイヤモンドクロス72秒
どの方向の電車に乗っても満員となるラッシュ時。ダイヤモンドクロスがなくなる直前のダイヤは今津線を合わせて約660本。回送電車も入れると1000本近い電車が通りました。
ダイヤモンドクロスを横断する平均時間は72秒。コンピューターで超過密交差を制御し、北口駅での乗降を少しでも減らそうと北口駅に停まらず通過する臨時列車を走らせたりしますが、今津線の今津行きは神戸線待ち、宝塚行きは乗換え、また三宮発梅田行きでも電車が止まり、ダイヤが複雑となり乗客対応が限界となってきました。
昭和53年、阪急電鉄は平面交差をなくす北口駅改造計画を公表し、昭和56年9月には橋上駅舎を新設し、配線を変更する具体案を発表しました。
工事内容は今津線を交差個所で分断し、その跡に神戸線ホームをを移して10両用ホームを建設、駅構内地下道を廃止して橋上駅舎とし、一般通行者が自由に通り抜けられる通路も配置することになりました。
惜しまれつつ
平成7年の阪神淡路大震災後、阪急西宮北口駅周辺は大きく変わりました。北口市場はアクタ西宮、阪急西宮球場も阪急西宮ガーデンズ、北口団地はマンション街となりました。
線路の平面交差は路面電車では数多くありますが、列車本数の多い鉄道線同士では全国唯一であった「ダイヤモンドクロス」は、昭和59年3月25日、姿を消しました。
モニュメントのある公園には、鉄道ファンが訪れる場所であるとともに、近隣の人々のいこいの場となっています。
<参考文献>
『75年のあゆみ』(阪急電鉄株式会社/昭和57年10月19日)
『読売新聞』(昭和54年11月15日)
『朝日新聞』(昭和41年7月22日、昭和54年6月13日)
『神戸新聞』(昭和36年7月18日、昭和56年10月15日、昭和57年5月22日)
『市政ニュース』第167号(昭和34年5月25日)
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