新年、感謝もあらたに
初めまして。田口壮と申します。
平木小、平木中、西宮北高そして関学と、西宮の懐に抱かれ、育ってまいりました。
私事ではございますが、昨年、21年間お世話になったプロ野球を引退し、解説者としての第一歩を踏み出しました。ベテランと呼ばれた立場から、赤子同然になった僕にとって、学ぶことのあまりに多い社会人一年目。慣れない出来事の連続に、これまでいかに、特殊な世界で守られてきたかを実感しています。同時に、この歳になってまた、新しい経験をさせていただけることのありがたさも、ひしひしと噛み締めている毎日です。
さて、僕のふるさと西宮。野球人としては、甲子園を外しては語れません。野球の聖地は、「学校行事では行けるのに、野球だと行けない」近くて遠い球場です。甲子園で野球をやりたい、その夢は後年、ビジター選手として叶えられることになったのですが、僕の人生の中で、強く憧れ、目指すという具体的な初めての目標だったことに間違いありません。
目指すものがあるのはいいことです。憧れるものがあるのは楽しいことです。それが不可能に近かったり、とても遠いと感じるのは切ないけれど、簡単に手に入るものより、ずっとやりがいがあるものです。3歳で野球をはじめ、いつかプロ野球選手になる、甲子園に出る、メジャーに行く、と、形を変えていった僕の夢は、紆余曲折を経ながら、叶ったり、叶わなかったりしました。しかし、僕にとって一番大切だったのは、結果ではなく、経過において出会ったたくさんの人たちとの触れ合いや、助けていただいたことへの感謝でした。勝負をする瞬間、人は一人になるけれど、その勝負の場所を作ってくれるのは、家族や友人、関係者の支えに他なりません。
いま、9歳の息子が野球をやっています。プロ野球に関わる人間として、彼ら野球少年たちに何を伝え残すかも、僕の大切な役目だと思っています。僕が伝えていきたいこと。それは単純に「野球の技術」ではありません。何かに挑戦しようとする時、僕たちは立ちふさがる壁に戸惑い、意気消沈してしまう瞬間を経験します。それを助け、支えてくれるすべての人と環境に感謝しよう、という気持ちこそ、僕が子どもたちに伝えていきたいことです。自分がどれだけ助けられているか、まわりをよく見回して、と。僕もまた、その気持ちをしっかり確認しながら過ごしたいと思っています。
皆様にとって、実り多き一年でありますように。
明けましておめでとうございます。