市長コラム 令和元年(2019年)11月
更新日:2019年10月31日
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受け継がれている「People to People(人と人のつながり)」
10月18日から23日の日程で姉妹都市であるアメリカ合衆国ワシントン州スポーケンSpokane市と、シアトル市、オレゴン州ポートランド市を訪ね、関係者との懇談や視察に行って参りました。少しは寒いという認識でしたが、その程度の認識は結果として甘く、西宮でいえば冬の気温で連日降雨という天候でありましたが、その寒さを吹き飛ばすほどの温かな出迎え、出会い、そして様々な刺激を得ることができた訪米となりました。
スポーケン市と西宮市は、1961年に姉妹都市協定を締結し、今年で実に58年の歳月を重ねてきました。当時、全米では世界の都市と「People to People(人と人のつながり)」を広げようとの動きがあり、スポーケン市が日本の都市との提携を希望していたところ、鳴尾で幼少期を過ごされたスポーケン市在住日系人エドワード・ツタカワ氏とスポーケン市で牧師をされていた関西学院大学出身の島田重雄氏が西宮市を推薦されたことから始まります。
「People to People」は、58年を経た今も、強く深く、根付いていました。スポーケン空港に降り立つと、スポーケン西宮姉妹都市協会のヘリゲス会長らが、初めて出会った私を古くからの友人のように歓迎して下さり、その温かさに感激しました。温かく迎えられるのは私たちだけではありません。40年以上も続く高校生の交換留学生やキャンプ事業での中学生たちも、初めての訪問で不安いっぱいの中、姉妹都市協会の皆さんに温かく迎えられるのです。こうした両市の絆を、より強固にすることになるのが、今年9月に完成した、ダウンタウンにある市役所の目の前のRiverfront Park内にそびえたつ、今津灯台のモニュメントです。市民の憩いの場に「西宮の今津灯台」がある光景、これほどまでに姉妹都市との関係を大切に考えてくださるスポーケン市民に、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
スポーケン市を中心に、アメリカの行政やまちづくりを視察すると、折に触れて「市民を巻き込む工夫」と、「行政に参画しようとする市民の意識」が息づいていることを感じました。積極的なボランティア文化とそれを支える行政の姿や、市議会を訪れたたくさんの傍聴者を見て、自分たちのまち(国)は自分たちで作っていくもの、という意識が根付いていることを実感しました。
さらに、今回改めて感心したのが、Fundraising(資金作り)に対する行政の意識です。日本では、基本的に行政が行う事業は税金のみで賄うケースがほとんどです。アメリカにおいても、行政の仕事は税金が基本ですが、それだけでなく、節々にそれぞれの組織がFundraisingに意欲的です。スポーケン市ではCondon市長がイニシアティブをとり、国際交流事業を行うために資金集めパーティーを開催、約500名の参加者が125ドルのチケットを購入し参加、その資金で若者を海外の姉妹都市に送る事業に充てています。また、スポーケン市域を所管するBoard of Education(教育委員会) でも、必要な事業費を捻出するためにFundraisingを行っていると話を聞きました。それぞれの学校のPTAも、同様に積極的なFundraisingを通じて、教育環境の向上に大きな役割を果たしているそうです。さらに、地域福祉の要であるCommunity Center を運営するNPO法人も、運営事業の補助金や収入だけでなく、自らがFundraisingを積極的に行い、機能の向上を目指して活動しているとのことでした。こうした公共機関が、税だけを頼りにせずに資金を積極的に集めるためには、それぞれの組織の活動が社会に評価されるように絶えず努力を重ねることになり、とてもよい効果があると思います。日本とは制度も文化も違いますが、しかしこうした取り組みをみて、公共のあり方について考える、とてもよい刺激となりました。まさに私が今、西宮市で目指している「シチズンシップの醸成」に向けて、参考にしたいと思います。
令和元年11月1日