「宮水」を知っていますか?~宮水保全条例を制定しました~

写真:宮水発祥の碑(久保町)の現在
宮水発祥の碑(久保町)の現在
写真:宮水発祥の碑(久保町)の昭和30年代の様子
宮水発祥の碑(久保町)の昭和30年代の様子

日本有数の酒どころとして知られる西宮、その酒造りを語るうえで「宮水(みやみず)」は欠かせない存在です。古くから西宮の酒を支えてきた宮水は、宮水保存調査会による努力の甲斐もあって、今もキレの良い辛口のお酒を生み出しています。西宮の天然資源であるこの水を後世に伝えていくため、市は昨年12月に「宮水保全条例」を制定しました。

【問合せ】都市ブランド発信課(0798・35・3071)

自然が醸し出す奇跡の「酒造用水」

宮水は西宮神社の南東側一帯(久保町や石在町など)から湧き出しており、おおむね地下2メートル~5メートルの浅い地層を流れている地下水です。
3つの伏流水がブレンドされた水
写真:日本酒
日本を代表する日本酒「灘の生一本」のキレには
宮水が欠かせません
宮水地帯には3つの伏流水が流れており、かつて海であった地域を流れる「法安寺伏流」「札場筋伏流」は、酒の発酵を助けるカリウム、リンなどを多く含みます。一方、夙川を起源とする「戎伏流」は酸素を多く含み、水中の鉄分を酸化鉄として沈殿させて除去します。これらの伏流水が合流することでミネラルが豊富で鉄分が少ない「宮水」となっています。
170余年にわたり銘酒を生み出してきた歴史
室町時代
(15世紀頃)
まだ「宮水」は発見されていませんが、西宮の酒は室町時代には「西宮の旨酒」として知られていたそうです
1840年 宮水の発見
写真:宮水運搬車(昭和30年代)
「宮水」を運ぶ宮水運搬車(昭和30年代)
酒造家・山邑太左衛門(やまむらたざえもん)が西宮の酒の秘密は仕込み水にあることを発見。当時は「西宮の水」と呼ばれていたものがやがて「宮水」になったといわれています。
宮水の発見により酒造業者が競って宮水を求めたことで、宮水を売る「水屋」という西宮独自の商売も生まれました。
1924年 宮水保存調査会 発足 ※当時は「宮水保護調査会」
1950年代~ 高度経済成長期に入り開発が進む
調査会が保全活動に一層の力を入れていきます
1985年 名水百選に選ばれる
写真:久保町の宮水井戸
阪神・淡路大震災時には、普段開放されていない宮水井戸も
一般開放されました(写真は久保町)
2017年 宮水保全条例を制定

開発と共存してきた「宮水」

結成から90年を超える歴史ある調査会
写真:水質分析の様子
水質分析の様子
宮水保存調査会は、灘五郷酒造組合により設置され、井戸水を定期的に調査して宮水に関わる地下水の水位・水質の分析などを行っています。90余年にわたる調査会の活動により守られてきた宮水は、学術的に貴重なものとして日本の地下水研究にも役立っています。

都市開発と地下水保全の両立
写真:酒造用の宮水の出る井戸
酒造用の宮水の出る井戸の状態は
灘五郷酒造組合で管理しています
調査分析の他、調査会では開発工事の際に宮水の流れを妨げない手法を提案しており、事業者もそれに応えるかたちで開発と保全の両立が図られてきました。都市化の進む西宮で今なお水量と水質を保つことができているのは、こうした取り組みの賜物(たまもの)です。

これからも宮水を守っていくために ~宮水保全条例
画像:条例の保全対象区域
条例の保全対象区域(斜線部)
条例は、開発事業者が宮水の保全対象区域内でマンション建設など一定規模以上の工事を進める際、灘五郷酒造組合との事前協議を「義務」とするもので、4月から運用されます。これまでも協議をお願いしていましたが、宮水のことを知らず、協議無しに開発を進めてしまうケースがあったため条例化を図りました。条例の趣旨は、宮水について周知し保全について理解を得ることであり、これまで以上に開発を厳しく制限するというものではありません。

宮水に携わる専門家にお話を聞きました

灘五郷酒造組合 宮水保存調査会 済川 健 さん
写真:灘五郷酒造組合 宮水保存調査会 済川 健 さん
宮水保存調査会では、「酒ぐらルネサンスと食フェア(毎年秋に実施する日本酒の祭典)」で「宮水コーナー」を設けて、地下水保全の取り組みを紹介しています。
これからも調査・保全活動を続けていくとともに、こういった広報活動も行って宮水という西宮の「宝」を守っていきたいと思います。
白鹿記念酒造博物館(酒ミュージアム)弾正原 佐和 さん
写真:白鹿記念酒造博物館(酒ミュージアム)弾正原 佐和 さん
当館は酒造りの歴史や文化を後世に正しく伝えるための博物館で、明治の酒蔵を震災から復興させています。中ではかつて使用していた宮水井戸などを見学できます。
今後も多くの人に西宮の酒文化を身近に感じてもらえるよう努めてまいります。ぜひお越しください。

酒ミュージアム


【住所】鞍掛町8-21
【開館時間】午前10時~午後5時(入館は4時半まで)
【休館日】火曜日
【入館料】400円(小・中学生200円)
【電話番号】0798・33・0008

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