平成31年度西宮市施政方針
更新日:2019年2月20日
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第17回定例会(平成31年2月20日)
目次
平成31年度西宮市施政方針
本日ここに、西宮市議会第17回定例会の開会にあたり、新年度予算案をはじめ諸議案の提案とともに、私の施政方針を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご支援を賜りたいと存じます。
はじめに
昨年4月の市長就任以来、市政における確かなかじ取りを行うこと、急がず慌てず奇をてらわず、一歩一歩踏みしめながら歩むことを意識してまいりました。すなわち、市民に安心感を持ってもらえる市長、議会の皆様との信頼関係を構築できる市長、役所内にとっても共に仕事ができる市長たるべきと務めてまいりました。私が申し上げていることは、「あたりまえ」のことでありますが、こうした「あたりまえ」の姿があってこそ、議会並びに市民と共に、住みよいまちづくりができると考え、今後もこの基本を忘れることなく精進し、市政運営にあたってまいりたいと思います。
さて、平成31年度は、今定例会に提案いたします第5次西宮市総合計画の初年度となります。この新たな総合計画では、文教住宅都市というこれまでのまちづくりを継承しながら、都市目標として「未来を拓く 文教住宅都市・西宮 ~憩い、学び、つながりのある美しいまち~」を掲げ、6項目から成る「まちや人の姿」により10年後の西宮像を示しています。この「拓く」という言葉には、新たなステージを切り拓くという前向きなイメージと力強さがこめられています。西宮の魅力や強みを伸ばすとともに、地域のつながりを重視し、市民の皆様と一緒に、一段上の文教住宅都市を目指してまいります。
また、5月1日には、新天皇が即位され、平成から新たな元号へ改元されます。これから、新しい時代が始まります。
本市においても、新たな一歩を踏み出す1年にしたいと考えております。
それでは、新年度に実施する主要な事業・施策について、昨年6月の私の所信表明の体系に沿ってご説明いたします。
1 行政の信頼性向上に向けた市役所改革
1つ目の柱は、行政の信頼性向上に向けた市役所改革についてです。
●行政経営改革の推進
歴史ある西宮市の市長として一年弱仕事をする中で感じるところは、本市での政策効果の検証による業務改善の取組や、執行体制の面で課題が多くあるということです。これまで、阪神・淡路大震災以降、厳しくなった財政状況に対処するため、財源捻出を目的として行財政改善の取組を行ってきました。一方で、平成16年に策定した「西宮市行政経営改革基本計画」は、行政運営の仕組みそのものを改革し、行政の持つ限られた資源を最大限に活用することで、行政サービスの効率的・効果的な提供が可能となる仕組みづくりを目指したものでしたが、未だその取組が十分に浸透し、発揮されているとは言えません。そこで、行政の仕事を整理・再編、持続可能性といった切り口で改革していく、これを行いたいと思っています。
そのような思いから、平成30年度には、効果的な行政評価の実施手法や市民参画の手法を検討するため、行政評価等検討懇話会を設置し、大学教授ら有識者の力を借りながら、行政評価や事務事業の見直しに着手しました。現在本市では、全506事業について事務事業評価を行っていますが、その評価が所管課の自己評価に留まり、どう改善につなげていくかという課題がありました。そこで、各局の事業について、施策目的と合致しているか、成果指標の設定が適切であるかなどの視点で見直しを行いました。新年度には、対象事業を広げて見直しを行い、今後の予算へも反映させていくこととしております。
このような取組に加え、行政経営改革に向けた具体的な施策としては、次のようなものを新年度予算に計上しております。
業務の効率化については、現在の業務量や業務遂行における課題を把握しながら、事務の整理、統合等の解決に向けた検討を行います。また、各部局で実施している業務のうち、可能な事務についてはICTの活用や業務の統合・委託化を進めることにより、職員の働き方改革の推進や人件費の抑制に努めます。
ICTの活用については、システム操作自動化ツール(RPA)を導入し、定型業務の自動化を推進します。また、行政が保有するデータの活用として、意思決定に資するデータ分析や、オープンデータの利用拡大を推進します。
また、業務の統合については、市税の納付勧奨コールセンターを国民健康保険料コールセンターと統合し、新たに介護保険料や留守家庭児童育成センター使用料等を加え、市の債権に係る共通コールセンターとしての運用を開始します。
内部統制については、方針の策定と推進体制の整備とともにリスク評価等の運用を進めます。同時に財務事務における業務改善のための分析と内部事務の見直しに着手します。
なお、私が選挙公約として訴えた、「市長退職金廃止から始まる市役所改革」について、私の任期に限って市長退職金を不支給とする条例案を昨年6月定例会に提案しましたが、議会の皆様からのご意見を踏まえ、9月定例会で撤回しました。現在、他市の事例調査や特別職報酬等審議会からご意見をいただくなどの必要な条件整備を進めているところであり、それらがそろい次第、再び提案させていただきたいと考えております。
●広報・広聴の充実
次に、広報・広聴活動の充実についてです。昨年は多くの災害があり、その度に情報発信の難しさを痛感しました。また、市長に就任して10か月が経ちましたが、この間、市民のご意見は市政を改善するとても大きなヒントになる、と思うことも多々あり、広報・広聴を充実させることの重要性を実感したところです。
このため、皆様からより多くのご意見・ご提案をいただけるよう、市民の声制度の新たなツールとして、昨年11月に、「市長への手紙」の投函箱を各支所等9か所に設置しました。
また、昨年は、私が地域に出向き、直接に市民と対話をする「市政報告・広聴会」を市内6か所で実施し、多くの方にご参加いただきました。
これらによりいただいたご意見等を十分に分析・活用するとともに、共有することが市民にとっても有益であろうものにつきましては、市のホームページ上で掲載したいと考えております。今までのFAQ(よくある質問)よりも分かりやすい形にして、まずは「市長への手紙」でいただいたご意見から順次進めてまいります。
また、市民との情報共有をより進めるために、若年層を中心に利用者が多い「LINE@」を新たなツールとして、今月から導入しております。プッシュ型で情報提供ができる、こうしたツールを活用することで、災害時も含め、必要な情報を少しでも広くお伝えすることができるようになると考えております。
広報面では、市のホームページ管理と広報部門の連携を強化してまいります。様々な所管や媒体により広報活動をしておりますが、これらがより有機的・効率的に展開され、情報の受け手である市民にとってより分かりやすいものになるよう取り組んでまいります。
●シチズンシップの醸成と地域コミュニティの強化
また、行政経営改革を進める上で、私が目指す市政に特に重要と考えているのが、市民の参画です。この10か月、市長として各地域に出向く度に感じるのが、地域を支えていこう、元気にしていこうとする市民の力強さです。こうした市民性、シチズンシップを活かし、醸成していくための取組を、積極的に研究、検討してまいります。私の言うシチズンシップとは、市民としての意識、前向きに地域を良くしていこう、社会の一員としての役割を果たしていこうという意識のことです。行政のみが公共サービスの担い手ではありません。地域住民や様々な団体が一歩進んだ役割を担うことによって、例えば防災力はさらに強化され、地域の子供や高齢者への見守り活動もこれまで以上に充実していくものと考えます。まさに文字通り「自治」こそがまちづくりの基本であり、多くの市民がそうした思いをもって行動していただいているところですが、その動きをさらに強めていきたいと思っています。様々な機会や場を通じて、シチズンシップについて感じたり、考えたりする機会を増やし、市民参画を進めていくためのきっかけづくりをしていきたいと思います。
地域活動の大きな要が、地域コミュニティです。各地域では、様々な団体が、活動しております。それは、自治会であり、小学校区単位の青少年愛護協議会やスポーツクラブ21であり、地域ごとの社会福祉協議会や防犯協会などであります。しかしながら、自治会がない地域もあれば、活動団体の担い手不足や高齢化が顕在化している地域もあるなど、それぞれの地域に様々な課題があることも、市として認識しているところです。こうした状況をしっかりと踏まえ、地域コミュニティの強化に向けた支援の検討を進めていきたいと思います。
また、地域コミュニティ活動は、地域活動の拠点となる公民館や市民館とも密接に関わります。所管の垣根を超えて、必要な施設の維持、整備のほか、機能のあり方の整理にも取り組んでまいります。
その中で、市民館のうち耐震性に課題のある施設について、利用者の安全を確保するため、順次建替えを進めるほか、越木岩公民館については、本庁北西地域の拠点施設となるよう建替えに向けた検討を進めるとともに、公民館・市民館など、施設の効率的な活用に、引き続き取り組んでまいります。
また、少子高齢化が進む中、家族構成の変化などにより住民同士のつながりの希薄化やコミュニティの機能低下が危惧されています。
これらの解決に向け、生涯にわたる学びを通じた人づくり、つながりづくりが、シチズンシップを育み、持続可能な地域づくりにつながるよう、社会教育を基盤とした生涯学習政策と地域づくりを推進するコミュニティ政策が連携できる体制づくりについて検討を進めてまいります。
2 子供子育ての応援と子供や大人の学びの支援
2つ目の大きな柱は、子供子育ての応援と、子供や大人の学びの支援についてです。
●子育ての応援
文教住宅都市である西宮市にとって、教育、子育て施策は、その大事な骨格となる分野です。「子育てするなら西宮」と掲げて久しいですが、名実ともにその理念を実現するために、私の市政においても、大きなエネルギーを本分野に注ぎたいと考えております。
また、日本全体での人口減少の波は、西宮市においても例外でなく、本市の出生数は、近年、減少傾向となっております。これは様々な要因によるものと思いますが、子供を産もうと思われる方が、その出産後の子育てに関して、大きな不安を抱えるようなことがあってはいけないと思います。そこで、大きな不安要素の1つである待機児童問題については、市として新たな施策を講じたいと考えております。
待機児童対策については、平成28年度に策定した3か年計画に基づいて保育所等受入れ枠の拡大に努めており、平成31年4月には新たに520人、31年度末までの通算では1,211人の受入れ枠の拡大を見込んでおります。なお、国が主導して市内でも整備が進んでいる企業主導型保育施設を含めると、3か年計画の目標である1,500人を超える受入れ枠の拡大が図れる見込みです。今後も引き続き受入れ枠の拡大に向け、保育施設の整備を進めてまいります。また、私立幼稚園が不安なく認定こども園に移行できるよう支援に努めるとともに、預かり保育事業を拡充していただけるような支援策の検討に取り組みます。加えて、認可保育所等に申込みをしたが入所できず、やむを得ず認可外保育施設を利用される方への支援の拡充を図ります。この制度によって、補助上限額までの利用料の認可外保育施設を利用される方であれば、認可保育所に通うのと同等程度の負担で認可外保育施設を利用できるよう、大胆に負担軽減を図ります。
生瀬地域の幼児教育・保育環境の整備については、市立生瀬幼稚園を生瀬小学校敷地内に移転した上で、現在の生瀬幼稚園の施設を保育所あるいは認定こども園として利用するための取組を進めます。
また、民間保育所等の保育士確保については、これまでの支援策に加え、保育に係る周辺業務に保育支援者を活用するために要した経費を補助する制度を新設します。
病児保育については、新たに1か所の施設が開設します。また、今後も、新たな設置を進めるため、実施施設に対する、市独自補助の拡充を図ります。
幼児教育の無償化については、10月からの制度開始に向けて国の動向を注視しながら、着実に準備を進めてまいります。この幼児教育の無償化については、子育てに関する費用面での負担軽減という議論が中心となっていますが、同時に重視すべきは、就学前の子供を安心して預けられる環境の整備と質の高い就学前教育・保育の提供です。
本市においては、就学前の子供がスムーズに小学校に上がり、しっかりとその生活になじんで行けるよう、公私立の幼稚園や保育所と小学校が連携して作り上げた「みやっこ『つながり』カリキュラム」があり、その存在を誇らしいと思うとともに、こうしたものを作り上げた西宮の教育・保育関係の皆様に、改めて敬意を示すところです。この長きにわたる実績をベースに、就学前の子供の育ちをさらに支援するために、どういった施策が考えられるか、研究を進めてまいりたいと思います。
家庭での子育て支援については、身近な地域で気軽に子育て世帯の交流や相談ができる環境づくりを推進するため、21か所目の子育てひろばを改築中の香櫨園小学校内に開設するほか、JR神戸線以南の地域で4か所目の利用者支援事業いわゆる子育てコンシェルジュの開設を目指します。また、子育てひろばのない地域には集客施設での実施も含め、開催場所、活動回数を増やすなど移動児童館の拡充を行います。
乳児相談について、新年度は、中央・北口・鳴尾の3保健福祉センターと若竹公民館の4か所で実施するとともに、児童館・児童センターと移動児童館の17か所へ保健師が出向いて支援を行います。このことにより、地域の身近な場での相談が増え、児童館等の子育てひろばとの連携の強化を図ることができ、日々の見守りも行える体制とします。
昨年12月より開始した助産師による産後ケア訪問等事業を拡大し、より多くの対象者への支援に取り組みます。助産師を北口保健福祉センターに加え、中央保健福祉センターや鳴尾保健福祉センターにも配置し、産後ケア訪問や妊産婦への窓口相談等の充実を図ります。
また、子ども食堂について私がイメージするのは、子供の居場所、そして食事をきっかけとした地域コミュニティの拠点づくりといったものです。
既に開設されている団体もありますが、こうした食堂を開設する際には一定のノウハウが必要であることから、新規開設や運営面での情報交換会の開催などに取り組んでまいります。
留守家庭児童育成センターについては、待機児童の解消や4年生受入れを図るため、施設整備を進めます。増加傾向にある障害のある児童や支援を必要とする児童に対応するため加配指導員を増員するとともに、夏休み等長期休業期間中の8時開所を全施設で実施します。また、待機児童の解消を図る新たな手法として、民間事業者による放課後児童クラブ、いわゆる学童保育の設置を目指します。
また一方で、各放課後関連事業の役割を整理し、全ての児童が安全で有意義に過ごすことができ、保護者が安心できる効果的かつ効率的な新たな放課後の居場所づくり事業を意欲的に進めてまいります。
この事業により放課後の学校施設が全児童にとってのびのびと過ごすことができる空間になるとともに、留守家庭児童育成センターの待機児童や高学年児童の受入れ、さらには児童館が偏在しているという課題解消に向け、効果が期待できると考えています。
●学びの支援(学校教育)
本市にとって、学びの支援、学校教育施策は、とても重要な分野であります。市民からの期待が大きい分野でもあり、平成27年の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正によって、首長のリーダーシップが発揮しやすくなったことから、積極的に取り組んでまいりました。例えば、総合教育会議を、本年度は既に4回開催し、教育長はじめ教育委員の方々と様々な議論を重ねてまいりました。そうした中、いくつかの点で新年度予算において、新たな方向性を示す施策を盛り込むことができました。
まず、西宮型コミュニティ・スクールについては、現在の教育連携協議会の取組を発展させ、保護者や地域の方々が責任をもって学校運営に参画し、学校と地域社会が目標を共有してより良い教育の実現に向け取り組むことが、地域全体の活性化につながっていくものと考えます。学校、地域の関係者が十分に共通理解をしながら、地域と共にある学校づくりを推進していけるよう、2020年度からの順次導入を目指して、関係規則を整備するほか、市民向け、教職員向けの研修会を実施します。
西宮浜小学校及び中学校では、2020年度の小中一貫校(義務教育学校)の開校に向けた魅力ある学校づくりについて、特色ある教育課程の編成や通学手段の検討などの具体的な準備、校内の必要な整備を実施するとともに、児童生徒の募集に係る広報などを行います。この取組を出発点として、将来的には、他地域においても、その地域の状況を踏まえた同様の取組の展開を目指したいと考えています。
学校支援のための人員については、部活動指導員やスクールソーシャルワーカーの配置を拡充します。また、これまでのボランティアによる学校図書館指導員に替えて、臨時職員として学校司書を配置します。
インクルーシブ教育システムの構築については、学校園において障害のある子供に合理的配慮の提供ができるよう基礎的環境整備を進めます。新しい人的支援として、幼稚園への保育支援員や介助の必要な子供が複数いる学校への介助支援員を配置します。また、医療的ケアを必要とする子供への看護師配置を継続します。
不登校児童生徒に対する支援については、対象の児童生徒の増加とともに、多人数のクラスになじめない児童生徒への対応など、一人ひとりの状況に応じた支援が課題となっています。これらを踏まえ、鳴尾北幼稚園休園施設を活用して2か所目の適応指導教室を整備し、より学校に近い環境で社会復帰や学校復帰を目指した教育的な支援を行う「あすなろ学級」とするとともに、こども未来センターの適応指導教室は、福祉的・医療的なサポートが必要な児童生徒のための少人数学級で個々の状況に応じた支援を行う「(仮称)プレあすなろ学級」として位置付けるなど、適応指導教室の拡充・再編を行います。
学校施設については、改築中の香櫨園小学校の新校舎建築工事を完了するとともに、引き続き外構整備等を行います。校舎の改築に向けた取組を進めている春風小学校及び西宮養護学校では、工事に着手するほか、安井小学校の設計や、瓦木中学校の基本計画策定を進めます。また、学校施設長寿命化計画に基づき、長寿命化改修に向けた設計や、学校施設改善及び維持管理のための各種改修工事を実施します。市立幼稚園の空調設備については、全園への設置が完了するよう実施します。小・中・高等学校体育館の空調設備については、学校教育だけでなく避難所や地域スポーツ活動の視点も交えて議論するため、庁内関係部局による検討会を立ち上げ、空調を設置する場合の冷暖房能力や様々な温度管理の方策など、技術面における条件を整理し、運用面のソフト対策も含めて検討いたします。
●豊かな暮らしを彩る学びや文化の支援
次に、スポーツが果たす役割については、その重要性は誰しもが理解するところです。昨年は多くの本市出身ないし関係のあるアスリートが、全日本レベルだけでなく世界で活躍する姿に、市民として勇気をもらいました。また、青少年の健全育成や、市民の健康維持にはもちろん、すばらしい地域社会の創造に、スポーツが果たす役割はとても大きなものがあります。
本市においても、スポーツ環境の充実については、新体育館及び新陸上競技場等を、総合スポーツ施設として建替え整備するための事業者募集手続きを行います。また、甲子園浜1丁目の土地開発公社保有地の買戻し後の活用策として、多目的グラウンドを含む公園としての整備について検討してまいります。また、既存のスポーツ施設の運用についても見直すことで、より多くの市民がスポーツに親しめる環境をつくっていくことができると考えております。
西宮浜総合公園については、公園センター及びセンター周辺広場などの整備を実施するとともに、海辺の眺望や親水空間などの特性を活かした、新たなレクリエーション機能を創出するため、民設民営による公園施設の整備及び管理・運営に向けた事業者公募を行います。
文化・芸術環境の充実については、アミティホールの天井耐震化工事にあわせて舞台照明設備等の更新を行うほか、老朽化したプレラホール固定座席を更新します。また、本庁舎周辺整備を検討するにあたり、市民ホールのあり方や必要な機能、運営方法などについて検討し、管理運営基本計画の策定を進めます。
●環境政策の具体化
次に、環境分野に対する取組です。第5次西宮市総合計画の策定にあわせ、第3次西宮市環境基本計画をはじめとした計画を策定しているところです。今日まで、平成15年に宣言した「環境学習都市宣言」に基づき、環境学習分野についてはEWC事業をはじめとして、とても評価されている活動を展開してまいりました。
第3次西宮市環境基本計画においては、環境目標に低炭素、資源循環、生物多様性、安全・快適の4分野を掲げ、行動目標として、学びあい、参画・協働、国際交流・貢献の3分野を掲げています。これらを、市民とともに具体的に進めていかなくてはなりません。次なる環境行動(アクション)につなげるため、市民と手を携えてまいりたいと考えています。
その代表的な施策が、ごみの減量に向けた取組です。
新年度からは、改定後の「西宮市一般廃棄物処理基本計画」に基づく取組を進めてまいります。その際、市民に対しても、廃棄物についての問題意識を共有してもらえるような取組を心掛けたいと思います。廃棄物を減らすというインセンティブを、もっと強めていくべきと考えております。回収されたごみは、市が焼却や資源化を行っていますが、排出量が減れば、今後整備していく予定の焼却炉の規模も小さくなり、焼却量が減少すれば、環境負荷も小さくなります。昨今は、海洋に浮遊するプラスチックゴミが生態系など環境を破壊するとして大きな話題となっていますが、こうした課題も、市民・事業者と行政が協力して、取り組むべきものと考えております。さらに、これまで進めてきた芦屋市とのごみ処理広域化については、引き続き協議を進めます。その過程で、広域化をする際の環境面や費用面などのメリットとデメリットをしっかりと市民にお示ししていきたいと思います。また、平成24年に閉鎖した西部工場については、施設の解体に向け、各種調査等を実施いたします。
3 シニアもみんなも生き生きするやさしいまちづくり
次に、3つ目の大きな柱は、シニアもみんなも生き生きするやさしいまちづくりについてです。
●産業基盤の強化・育成の推進
国は、全ての世代が安心でき、活躍できる「全世代型社会保障制度」を実現するため、労働制度も含めた様々な制度の改革を進めています。このような中で編成された国の新年度予算案では、全世代型の社会保障制度への転換に向け、消費税増税分を活用した幼児教育の無償化や社会保障の充実とともに、消費税引き上げによる経済への影響の平準化に向けた、臨時・特別の措置が盛り込まれました。
本年10月には、消費税率が現行の8%から10%に引き上げられることが予定されています。引き上げにあたって政府は、低所得者・子育て世帯向けのプレミアム付商品券の発行・販売のほか、キャッシュレス化を推進するため、ポイント還元支援など、あらゆる施策を総動員し、経済の回復基調に影響を及ぼさないよう、全力で対応するとしています。
本市においても、プレミアム付商品券事業等の実施に取り組むとともに、市内小規模事業者や商店街を対象に、キャッシュレス決済導入に向けた支援を行ってまいります。
また、住宅都市である西宮市ですが、48万人もの人口がある中で、法人は雇用の受け皿であり、納税者としても大きな役割を果たしていただいていることから、産業政策は重要と考えております。将来にわたって活力ある地域社会の構築を目指す地方創生の取組を実効あるものとするためにも、地域の経済と雇用を支える事業者の成長や持続的発展が不可欠であることから、今定例会に西宮市産業振興基本条例案を提出いたします。
さらに、同条例に掲げる理念を具体化し、今後の産業・雇用施策の指針となる「第3次西宮市産業振興計画」と「西宮市働きやすいまちづくりプラン」を策定し、本年4月から具体的な各種施策を実行していきます。
産業政策では、市内事業者が工場の更新を行う際に、国などから各種支援措置を受けることができるよう、「地域未来投資促進法に基づく基本計画」の策定に取り組んでまいります。
また、商工会議所、金融機関と連携した「創業サポート窓口」の充実を図るとともに、女性、若者、高齢者など、幅広い層による創業を促進する取組を進めていきます。
就業・労働政策では、働き方が多様化する中で、現役世代のキャリアアップ、再就職支援が課題となっており、働く意欲のある人が年齢に応じてキャリア形成することを支援する取組を推進します。
社会経済情勢により大きく変化する雇用・労働環境に対応していくためには、国・県との連携が不可欠であり、兵庫労働局、ハローワークと、さらに連携を強め、相談支援や就業能力向上に向けた支援などを強化していきます。
都市の農地については、市街化区域内農地の約64%を占める生産緑地の大半が2022年に指定期限の30年を迎えることから、一時期に多くの農地が宅地化される恐れがあります。都市の農地は、食糧生産だけでなく、防災、水源かん養等様々な重要な役割を担っているため、保全・活用策について検討を進めます。また、市民農園の拡充についても検討します。
●未来を見据えた快適なまちへ
新しい時代に入らんとする新年度は、ハード面のまちづくりにおいても過去からの課題解決に向けて、力強く前進する1年でありたいと考えています。特に課題となっている社会基盤整備に関しては、さらなる高齢化を迎える前に、着実に進めていかねばならないと考えています。
JR西宮駅南西地区においては、再開発組合の設立を支援し、市街地再開発事業による都市機能の更新と卸売市場の再生整備が同時一体的に実現可能な取組を推進します。卸売市場の再生整備については、新卸売市場の開設に向け、民設市場関係者に対して運営計画や投資計画策定等の支援を行います。また新卸売市場は、民設民営だからこそできる柔軟な発想により、市民にとっても食の楽しみを感じられる拠点、地域の活力の場となることを期待しております。
市街地や道路の整備についても、積極的に取り組んでまいります。阪急武庫川新駅の設置に向けた取組を進め、阪急電鉄神戸本線の連続立体交差化の予備調査を行うとともに、甲東瓦木地区でのまちづくり活動を支援します。
またこれ以外にも、平成31年度からスタートする「西宮市道路整備プログラム」で位置付けている街路事業などに取り組んでまいります。
名神湾岸連絡線については、車線数や周辺道路との接続などが示され、現在、国において詳細なルート・構造の検討が進められているところです。今後も地元自治体として協力するとともに、環境や景観に配慮した上で、地元との協議が円滑に進むように、国に働きかけます。
北部地域については、市民の日常生活を支え、命を守る重要な生活道路である、国道176号名塩道路の全線供用が早期に実現するよう、昨年も私自ら上京し、地元選出の国会議員や関係省庁に直接要望書を手渡すなどの活動を行っており、引き続き積極的な要望を続けてまいります。また、都市計画道路丸山線について、未整備区間の整備とあわせた周辺まちづくりを検討して、山口地域の活性化や交通利便性の向上を図ってまいります。
歩行者も自転車も安心できるまちづくりについては、安全・安心で快適な自転車利用環境の改善に向けて、ハード・ソフト施策を踏まえた総合的な計画の策定に取り組みます。
また、「お出かけしたくなるまち」を目指し、「市内の交通利便性」や「まちの魅力度」をさらに向上させるため、新たな移動手段である「シェアサイクル」について、検討を進めます。この取組は、環境面でも評価できますし、観光面でも効果が期待できると考えております。
さらに市民の皆様がお出かけ時に気軽に腰かけていただけるよう、ふるさと納税制度等を活用し、「どうぞベンチ」を幹線道路の広い歩道などに設置する取組を進めます。
●防災における自助・共助・公助の強化
昨年は、全国各地で様々な自然災害が起こった1年でもありました。6月の大阪府北部地震に始まり、7月には西日本豪雨、9月には台風21号、同じく9月には北海道胆振東部地震が発生し、甚大な被害をもたらしました。
このうち、台風21号では、本市でも高潮による沿岸部での浸水被害や、強風による家屋損壊などが多数発生しました。また、市内の4割に及ぶ約8万5,000戸で停電するなど、市民生活に大きな影響がありました。改めて、防災力の強化が必要であると認識したところです。
このような中、危機管理体制の強化については、第二庁舎(危機管理センター)の建築工事に着手するとともに防災情報システムの構築に向けて、実施設計を進めます。システム設計にあたっては、災害時に市民、市職員、防災関係機関などが「情報共有」をスムーズに行えることに重点をおいて進めてまいります。
市民への情報伝達の強化のために、携帯電話やスマートフォンなどを持たない人でも、災害時には自動的に電源が入り、避難情報等を取得できる緊急告知ラジオの購入助成を拡充し、普及を促進します。防災行政無線の更新にあわせて、高性能スピーカーを導入し、「聞こえにくさ」の改善を進めます。全戸配布する防災マップを最新の情報に更新し、土砂災害や洪水など、災害の種類ごとに避難所開設のルールを分かりやすく表示するとともに、啓発内容に関しても、高齢者や女性の視点も考慮したものとします。
南海トラフ地震等の大規模災害への備えとして、避難所での高齢者や女性に配慮した段ボールベッドやプライバシーテント等の備蓄のペースを加速します。近年の災害から得られた教訓や知見、新たな課題を踏まえた今後の防災・減災対策を推進するため、地域防災計画等の改定に着手します。
老朽化や耐震性の課題を抱える西宮消防署については、2020年度の着工に向け、引き続き建替えのための実施設計を進めます。
本市では、多発する局地的な豪雨等に対応するため、国が目指す整備水準である時間降雨55ミリメートルを目標として雨水浸水対策事業を進めています。新年度の主な事業としては、JR神戸線以南地区での雨水貯留施設や鳴尾浜での雨水排水施設の整備などを実施します。
また、水道事業は、今後も給水人口の減少や節水機器の普及などにより収益が減少していくことが見込まれることから、人件費をはじめとする経費の削減をさらに進めるとともに、施設の長寿命化や老朽管路の更新を重要度に応じて計画的に行うことで費用の縮減や平準化を図りつつ、近隣水道事業体との広域化・共同化の研究を進めるなど、必要な施策を推進してまいります。
また、「津波防災インフラ整備事業」をはじめとして、本市において県や国が実施している防災力強化のための事業が着実に進展するよう、積極的に協力するとともに、予算の確保に向けて、引き続き県と連携しながら国への要望を行ってまいります。
地域防災力の強化については、住民の防災意識の向上のため、引き続き様々な年齢層が参加しやすい催しを企画するとともに、防災授業や各種防災講座を開催します。地域防災マップや地区防災計画の作成など、地域の自主的な取組を支援するとともに、地域で避難支援に携わる支援者が安心して活動できるよう、ボランティア保険に加入する際の保険料を補助します。
●安心の医療・福祉体制構築へ
さて、今後ますます進展する高齢化社会に対する市や地域による取組の重要性は、高まる一方です。介護現場の深刻な人材不足に対しては、市としても県の補助制度を活用して、介護職員初任者研修の財政支援を始めます。また、認知症への理解を広げる活動にも積極的に取り組み、高齢化していく社会に向き合っていくような啓発に努めてまいりたいと思います。同時に、健康寿命を延ばすということも、取り組むべき大きな項目です。西宮いきいき体操については引き続いて各地で積極的に取り組んでいただけるよう、私も重ねて訪問するなどして、後押ししたいと思います。また、他自治体でたくさんの健康づくり施策が展開されており、本市でも各地域で多様な取組をしていただいているところですが、市として行うべき施策については、研究をしてまいりたいと思います。
そして、直面せざるを得ない現実として向き合うべきは、人口減少社会は、「多死社会」でもあるということです。行政としても、これまでの施策に加え、今の時代に沿った新しい施策が求められていると考えております。近年、他市でも利用が進む合葬式墓地を、本市も整備するとともに、終活サポートなどの研究もしてまいります。様々な不安を、行政の施策を通じて和らげることは、自治体の大きな責任であると考えております。
医療・介護や福祉については、在宅生活の支援として、一人暮らしの高齢者や障害のある人などを対象に、緊急時に福祉協力員及び民生委員等が対象者宅に駆けつける緊急通報救助事業に、警備会社が駆けつける仕組みと24時間対応の健康相談や月1回の安否確認(お元気コール)を新たに加えることで、福祉協力員及び民生委員の負担軽減と、日常生活の不安の解消に努めます。
障害のある人の社会参加が市民と協働で進められるよう、障害の特性に応じた情報コミュニケーションの保障や差別の解消を目的とした、誰もが暮らしやすい社会を実現するための条例制定の準備に取り組むと同時に、障害のある人への配慮や手助けができる「あいサポーター」を養成するほか、商業者や地域の団体が簡易スロープや手すりの設置などを行ったときにその費用を助成する制度を新設します。
また、生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業を拡充し、地域で埋もれた潜在的な生活困窮者に対して、積極的なアウトリーチを行う体制を整えていきます。
中央病院の県立西宮病院との統合につきましては、本年1月に、県市で正式に合意し、基本協定を締結したことから、統合新病院の機能や規模などを定める基本計画を、県と共同で策定し、引き続き、統合新病院の整備に向けた取組を推進します。新しい病院のあり方を県と共に検討していくことはもちろん、中央病院の跡地活用については、病院統合以後の周辺の医療環境等の分析を含め、検討を進めるとともに、県立病院の土地・建物についても、県と必要な検討を進めます。また、統合新病院の予定地であるアサヒビール西宮工場跡地については、県への売却時期等にもよりますが、新病院着工までの間、期間限定での利活用の可能性についても検討を進めたいと思います。
4 未来に向けた計画づくり
最後に、4つ目の大きな柱は、未来に向けた計画づくりについてです。
●公共施設マネジメントの推進
高度経済成長期の都市化の進展にあわせて整備した公共施設が、今後、次々に大規模修繕や建替え更新時期を迎え、長期にわたって多大な費用負担が見込まれています。
公共施設マネジメントでは、こうした公共施設の計画的な老朽化対策を進め、事業費の平準化やトータルコストの縮減を図るため、策定済み、あるいは現在策定中の市営住宅及び学校園等を除く建築系公共施設について、施設区分ごとに、それぞれの特性に応じた保全・再編計画の策定に取り組みます。
また、本庁舎をはじめ、周辺に点在し老朽化が進む公共施設の再編整備は長期にわたる取組となるため、建替え更新とあわせた機能の集約化や複合化、適正配置に関する整備構想を取りまとめ、効率的な施設整備を進めます。
中でも、公共施設の再配置とあわせた本庁舎周辺の新たなまちづくりを推進するには、アミティホールの更新が起点になることから、第5次総合計画期間後期での完成を目指し、具体化に向けた取組を進めます。
●2025年、そしてその先へ
さて、2025年に開催される大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマであり、多様で心身ともに健康な生き方や持続可能な社会・経済システムに関するアイデアや先端技術が集まり、発信されることになります。また、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)が達成される社会や日本の国家戦略Society5.0の実現も目指しています。
万博開催により、その経済効果による地域活性化も期待されますが、関西地域や日本文化の魅力発信や、未来を考える行動を呼び起こす様々なきっかけにもなると思われます。
また、2025年には、西宮市制施行100周年を迎えます。第5次総合計画で予定している事業を進める際に、2025年は現実的かつ、大きな節目の目標年にもなります。いくつかの大きな事業は、この100周年を視野に入れながら、進めてまいりたいと思います。関西が注目を浴びるであろう2025年において、そしてその先も、圧倒的に輝き、住みやすいまちは西宮市である、そのように市の内外からも思われるようなまちづくりに向けて、新年度は大切な仕込みの時期です。引き続き熱い情熱をもって、職員ともども、西宮市政にあたってまいりたいと思います。
5 予算
次に、平成31年度予算についてであります。
歳出では、幼児教育の無償化の実施や保育所等の待機児童対策、小学校などの建替えや改修工事など、子育て支援や教育関係の予算が大幅に増となりました。
一方、歳入においては、根幹となる市税収入は給与所得の伸びや企業収益の改善などで増収を見込んでいますが、臨時財政対策債を含む実質的な地方交付税については減となっております。老朽化が進んでいる公共施設の建替えや改修を進めるための財源として市債や公共施設保全積立基金を活用し、市有地の売却等も積極的に進めてまいりますが、増大する行政ニーズに対応するために必要な財源の確保が難しいため、不足する額につきましては、財政・減債基金からの繰り入れにより必要な財源の確保を図りました。
このように編成いたしました新年度予算は、
一般会計 1,840億7,348万1千円 前年度比 3.4%増
特別会計 876億3,290万3千円 前年度比 0.2%減
企業会計 474億6,677万6千円 前年度比 1.8%増
合計 3,191億7,316万円 前年度比 2.1%増
となっております。
むすび
以上が新年度予算案の概要でありますが、喫緊の課題への対応や、過去から検討を重ねてきた必要な事業・施策を着実に進めることを重視したことにより、当初予算における財政基金等の取り崩し額が前年度より増額となりました。予算の執行段階では、さらなる事業費の精査や経費節減により、基金の取り崩し額を極力、圧縮できるように努めるとともに、新年度に策定する行政経営改革の基本方針について、まずは庁内でしっかり共有し、議会のご理解もいただきながら、着実に実行していかねばならないと考えております。
このように、財政の健全性を将来にわたって保ちながら、市民にとって魅力あふれるまちづくりを実現できるように努めてまいります。
以上、新年度の市政に臨む私の決意と施策の大要を申し上げました。
議員各位並びに市民の皆様のご支援をお願い申し上げますとともに、予算案をはじめとする諸議案にご賛同賜りますようお願いいたします。
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