「第38回 西宮湯川記念賞贈呈式」が開催されました
更新日:2023年12月15日
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仏坂健太氏「第38回西宮湯川記念賞」を受賞
西宮市では、理論物理学分野における研究者を奨励するため、若手研究者(40歳未満)の顕著な研究業績に対して、西宮湯川記念賞を贈呈しています。
令和5年度は全国から17件の推薦がありました。
西宮湯川記念賞選考委員会(委員長:中務孝 筑波大学計算科学研究センター・教授)および西宮湯川記念事業運営委員会(委員長:青木愼也 京都大学基礎物理学研究所・所長)での審査の結果、仏坂健太氏が受賞者に選ばれました。
令和5年12月2日(土曜日)13時より西宮市フレンテホールにて「第38回西宮湯川記念賞贈呈式」が開催され、多くの市民の皆様にご参加いただき、記念品贈呈の他、受賞者決定の選考経過報告や、受賞者による受賞研究についての講演などが行われました。
【受賞者】
仏坂 健太(ほとけざか けんた)氏
東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター 准教授
(受賞者写真の無断使用を禁じます)
【受賞研究】
「中性子星合体に伴う電磁波対応天体の理論的研究」
【受賞理由】
2015年にブラックホール連星合体からの重力波が検出されたことにより、電磁波・ニュートリノ・宇宙線に次いで人類は宇宙を観測する第四のチャンネルを獲得した。その後2017年に観測された二つの中性子星の合体による重力波イベントGW170817では、重力波の到来方向の範囲内に電磁波対応天体を伴うことが発見され、重力波とともに電波、可視光・赤外線、エックス線、ガンマ線とあらゆる波長域の電磁波で同時観測・追観測がなされた。この解析には数千人を超える世界中の理論・観測研究者が参画し、さまざまな波長や手段で同時観測することによって天体現象の正体を明らかにしようというマルチメッセンジャー宇宙物理学の嚆矢となった。
仏坂健太氏は、すでにこの世界的大イベントの数年前より連星中性子星合体に伴う電磁波対応天体の理論研究に取り組み、さまざまな予言を与えており、それがGW170817によって見事に検証された。仏坂氏は共同研究者と共に、最初に、中性子星合体の際に、太陽質量の0.1-1%程度の質量がほぼ等方的に放出されることを数値相対論によって示し、電磁波放射を理論計算するための基盤を与えた。次に、キロノバ(放出物質の発光現象)の可視光・赤外線での光度曲線の予言、放射性r過程元素によるキロノバの加熱の理論構築、電波領域での残光現象の予言などを行った。これらの研究は、GW170817の電磁波対応天体の発見への道筋を示し、連星合体に伴いキロノバやガンマ線バーストがどのように起きたのかを解釈する上で重要な役割を果たした。また、仏坂氏らは、GW170817の重力波データに加えて、電磁波データを用いてジェットの向きを制限することで、ハッブル定数を決定できることを示した。これら一連の研究は、重力波宇宙物理学の歴史に残る画期的なものであり、西宮湯川記念賞にふさわしい業績である。
贈呈式の様子
仏坂健太様に市長から表彰状・楯・賞金・花束が贈呈されました。
※写真の無断使用を禁じます。
仏坂健太様による受賞者講演
※写真の無断使用を禁じます。
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