多文化共生を考える
発想の転換~心の壁を取り払うために
兵庫県立大学准教授 乾美紀

私たちは、珍しい習慣や異なる外見に敏感になりすぎることがあります。例えば留学生が握手やハグ(抱擁)で挨拶をしていたり、外国人の子どもがピアスをしているのを見ると、違和感を覚えないでしょうか。日本の常識は世界の常識と考えがちなので、外国人との習慣の違いを見つけると、それを受け入れることに躊躇(ちゅうちょ)してしまうのです。それがエスカレートすると、外国人と距離を置いたり、子どもの世界ではいじめが起こったりします。いじめは、違いを探すことから生まれるといえます。


しかしながら、それは正しいことではありません。発想の転換をし、似ているところを探すと人間関係や視野が広がり、寛容度の高い人間になれます。特に、外国人と接する中で、彼らとの共通点を見つけると一気に仲良くなれます。例えばベトナムでは、お正月にお年玉をあげる習慣があるようです。ブラジル人の子どもが耳にピアスをしていても、お弁当の中身がおにぎりだった時は親近感が湧(わ)いてきました。


ところで、ブラジルやペルーから来た日系南米人は、日本にどのようなルーツがあるかご存知ですか。彼らは、日本が貧しかった時代に出稼ぎのために南米に渡った人たちの子孫(3世や4世)なのです。時代や国境を越えて、外見は変わっているかもしれませんが、日本人の流れをくむ人々です。増加している中国人の中で、中国帰国者と呼ばれる人も同じです。彼らは第二次世界大戦後、混乱の中で中国に取り残された日本人の子孫です。また、ベトナム人の多くは日本が受け入れた難民の2世や3世またはその家族ですが、日本に帰化した人もいます。そのような事実を知ると、親近感を覚えてきますね。


私たちは普段の生活の中で違いを強調しがちですし、私自身も、「多文化共生」という、違いを前提にした学問を研究しています。でも、国という単位を取り払い、個人レベルで人を見ると、共生に近づけるように思います。人は違って当たり前だからです。発想を転換し、違いを受け入れ、共感できると心の壁を取り払うことができるでしょう。皆さんも少し心の窓を広げて、多様な背景を持つ人との共生を考えていきませんか。


【問合せ】秘書課(0798・35・3459)

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