多文化共生を考える
「Win-Win」の関係を目指して 兵庫県立大学准教授 乾美紀
皆さんは、「多文化共生とは何か」と聞かれると、どのように答えますか?色々な答えが期待できますが、「人々がおのおのの違いを認めながら共に生きる」ことが最も模範的な答えでしょう。多民族国家であるアメリカなどと比べ、日本では外国人を受け入れる基盤がまだ万全ではありません。私が暮らしていたアメリカでは、隣人が難民や移民であることは珍しくなく、“Respect the difference”(違いを尊敬する)ことを肌で感じさせられました。地域ボランティアは彼らに英語を教えると同時に、彼らの母語を学んでいました。
兵庫県でも外国人が増え、2014年末の在留外国人数(9万6530人)は全国7位の数字です。近年、日本にやって来た外国人の中には、専門職に就く人もいますが、工場などで働き、現状では人手が足りない産業などに労働力を提供してくれている人も多くいます。「あなたの食べているコンビニ弁当は、外国人の人たちが夜中に食品工場で作ってくれたかもしれないよ。」と授業でいうと学生は妙に納得してくれます。
多文化共生社会で理想とされることは、“Win-Win”の関係を築き上げること、つまり外国人も日本人もお互いが利益を得られることです。外国人が日本で安定した職を得て、地域で日本語を学び、子どもたちが教育を継続できれば、幸せと感じるでしょう。外国人が地域の人に支えられながら自立することが望ましいです。私たちも外国人と共に生きることで、異なる考え方や価値観を身に付けることができ、視野が広がります。外国人の子どもの補習教室でボランティアをしている学生は、言葉の壁にぶつかり、文化的摩擦からストレスを起こしますが、次第に多様性に寛容になり、国際感覚も身につけています。
人は違って当たり前です。問題はそこをどう受け止め、乗り越えていくかです。多様性にいかに対応できるかという「多文化共生能力」が問われる時代です。この地域で暮らして良かった、西宮市に来て良かった、と外国人に思ってもらえるようなまちづくりをしていきませんか。
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