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2011年9月10日 第1373号

中央病院移転整備等検討委員会の答申まとまる
地域医療への貢献を目指して

市立中央病院の今後の方向性を検討するために設置された「西宮市立中央病院移転整備等検討委員会」の検討結果が、9月1日に市長に答申されました。
この答申を受け、現在、市としての方針を検討中です。
広く市民の皆さんの意見を聴きながら、年度内には決定したいと考えています。
今回は、答申が描く新たな中央病院の姿などについてお知らせします。
問合せは市立中央病院(0798・64・1515)へ。

専門分野に応じた連携体制を強化

これまでの中央病院
市立中央病院は、昭和50年に現在の林田町に移転し、その直後から赤字経営が続いています。
これまでもさまざまな方法で経営健全化に取り組み、入院患者数の増加などの改善は見られるものの、顕著な収支改善には至っていません。
そこで市は、外部の専門家の意見を聴き、今後の方向性を検討するため、昨年11月に「西宮市立中央病院移転整備等検討委員会(以下、委員会)」を設置しました。
委員会は、中央病院の現状と問題点を次のように指摘しました。
現状と問題点
病院経営においては、高度な医療機器を導入するなど、その時どきのニーズに応じた投資を行わなければいけません。
しかし、その投資が適切に行われなかったため、診療機能が低下し、重症患者数や手術件数が減少しました。
その結果、収益が低下しています。
建物も、計画的な改修が十分に行われず老朽化が進み、療養環境の悪化による収益の減少と補修費用の増加をもたらしています。
今後は、耐震改修のための費用も必要です。
また、経営を担当している事務局は、市の人事異動で次々と人が入れ替わります。
そのため、複雑化する医療制度に適切に対応できないことも指摘されました。
年功序列により一律に昇給する給与制度や、柔軟性・機動性を欠く市の契約制度なども費用を押し上げています。
地域医療を支える中央病院の役割
このような体質の改善が必要である一方で、そもそも公立病院として存続させる必要があるのかという声もあります。
そこで、現在の医療状況や西宮市の地域医療の課題などから、中央病院の必要性や果たすべき役割が検討されました。
地域医療のあるべき姿
わが国では、医療が進歩し、より高度化・専門化しています。
そのため、昔のように1つの病院で全ての医療を提供することは非常に困難です。
そこで、地域の中の身近な診療所から、中央病院のような中規模病院、さらには兵庫医科大学病院のような大病院までが軽症から重症までをそれぞれの専門分野に応じて連携、補完し合い、地域医療を支えています(地域完結型医療)。
複数の医療機関にかからなければならないなど、不便な面もありますが、現在の高度な医療を維持するためにはやむを得ません。
その中で、中央病院は民間病院と競合するのではなく地域に必要な機能を補完し、地域医療に貢献する必要があります。
【地域完結型医療】
図:地域完結型医療の詳細
地域の医療状況と中央病院の役割
グラフ:がん入院患者数の年次推移

(1)一般診療(がん)

県の保健医療計画では、西宮・尼崎・芦屋の3市が1つの2次医療圏(特殊なものを除いて、医療の提供体制を完結すべき区域)を構成し、「阪神南医療圏」と呼ばれています。
この圏域は、医療環境が非常に整っているように見えますが、圏域内の病床の充実度は、県の基準や全国レベルを下回るなど十分とは言えません。
隣接する大阪府にはがん診療を得意とする病院が多いため、多くのがん患者がそれらの病院を受診し、入院していると考えられます。
大都市に挟まれていることは西宮の大きな魅力ですが、死亡原因の大きな割合を占めるがん治療を、他の県や医療圏に頼る現状は、地域完結型医療の考え方からは問題です。
中央病院は、特に死亡者数の多い5大がん(肺・大腸・胃・乳・肝がん)、膵(すい)がん、前立腺がんなどの治療に力を入れてきたため、高度な手術や診断の技術があります。
その結果、がんの入院患者数も増加傾向です。
平成23年2月には兵庫県がん診療連携拠点病院に指定され、地域のがん拠点病院としての役割が期待されています。

(2)救急医療

市では、兵庫医科大学病院と県立西宮病院に救命救急センターが設置され、前者においては「急性医療総合センター」を建設中であり、3次救急(重篤な患者に対する救急医療)はさらに充実する予定です。
一方、2次救急(入院や手術を必要とする中等症患者に対する救急医療)や1次救急(軽症患者に対する救急医療)は、病院・診療所の輪番や応急診療所により対応しているものの、弱体化しつつあります。
なかでも市内の小児1次救急は、夜11時半以降は尼崎市の応急診療所に頼るなど、市内の救急体制の強化が急務です。
中央病院では、これまでも輪番病院の一員としてのほか、診療所等のバックアップとしての救急体制も拡充してきました。
今後も、医師会や応急診療所との緊密な連携の下に、1・2次救急を充実させることが求められます。

(3)災害・広域的呼吸器感染症(新型インフルエンザ等)

本市の地域防災計画では、大規模災害時には兵庫医科大学病院、県立西宮病院と中央病院が連携し、応急医療活動を実施することになっており、中央病院の公立病院としての役割は重要です。
平成21年の新型インフルエンザ流行時には、中央病院でも、いち早く体制を整え、入院患者を受け入れました。
今後は感染症に対応できる機能の強化などが必要です。

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求められる役割を果たすために

地域に求められる役割を果たすためには、どのような病院が必要でしょうか。
(1)診療科・設備機器・規模は?
診療科としては、内科、外科、整形外科、小児科、泌尿器科、放射線科、麻酔科の7つが必要とされました。
高度医療のための設備機器を備え、老朽化した機器を更新するなど、医療機能の充実も必要です。
病床数としては厚生労働省が「地域医療支援病院」(地域の医療機関を支援し、地域医療を確保する役割を担う病院)の病床数の要件を200床以上としていることが参考になります。
また、医師や看護師等の確保が困難な状況を考えても、この200床程度が1つの基準となります。
(2)整備方法と望ましい立地は?
求められる役割を果たすためには、施設のリニューアルが必要です。方法としては、「耐震改修」「現地建て替え」「移転新築」の3つが考えられますが、工費や工期、工事中の診療継続の可能性等の観点から「移転新築」が最適であるとされました。
移転先としては、交通アクセスや他の医療機関との競合の排除などの条件を考慮し、現在の「県立芸術文化センター第2駐車場」が最適とされました。
(3)収支改善策は?
本来、急性期(発症してから進行が止まる、または回復のめどがつくまで)病院である中央病院が、診療機能の低下により、急性期の患者を受け入れられず、診療報酬の低下を招いています。
そこで、病院の機能を高めることで、高度な医療を提供する本来の急性期に特化することが求められます。
また、複雑な診療報酬制度への対応など、合理的な経営を行うために、専任の職員を採用し、育成することも必要です。
他の病院より高い給与費比率も下げなければいけません。
(4)経営形態は?
現在の中央病院は、ほとんどの制度が市長部局等と同じです。
経営上の決定権も、実際に病院経営を行う病院長ではなく、市長にあります。
これでは、機動的で柔軟性のある病院経営は望めません。
中央病院に適した経営形態を検討した結果、地方公営企業法の全規定(事業管理者の任命、職員採用規定、独自の給与の決定など)の適用を受ける形態が選ばれました。

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